魚介類に含まれる栄養成分

魚介類には、ビタミンやミネラル等、人の健康に必要な栄養成分が豊富に含まれています。
ここでは、特に代表的な成分とその効果についてご紹介します。

ビタミン

ビタミンA

生理作用視力保持、皮膚・角膜の保護、抗がん作用 など
欠乏症夜盲症、角膜乾燥、網膜機能低下、肌あれ、皮膚疾患、免疫低下 など
過剰症急性過剰摂取で皮膚の角化、肝肥大、悪心、嘔吐、頭痛
慢性過剰摂取で不熱、色素沈着、甲状腺機能低下 など
多く含む魚介類魚の肝臓全般、あんこうのきも、うなぎのきも、うなぎ、ぎんだら、あなご、ほたるいか、すじこ、わかさぎ、たたみいわし、まぐろ など

脂溶性ビタミンのひとつ。化学名は「レチノール」。
食物に含まれるビタミンAは、体の中でそのままビタミンAとして作用するものと、体の中でビタミンAに作り替えられて作用する「プロビタミンA」があります。プロビタミンAとしてよく知られているベータカロテンはビタミンAとしての働きがとても強く、体内でビタミンAとなる物質と、ベータカロテンのまま働いて、活性酸素の発生を防いだり、無毒化したり、がんや心臓病、動脈硬化の予防に効能を示す物質があります。
皮膚や目の健康に欠かせない栄養素ですが、過剰に摂取するとかえって体に悪い影響を及ぼすことがあります。通常の食生活であれば心配はありませんが、サプリメントで大量に摂る時には注意が必要です。

特に積極的に摂取するとよい方

  • 暗くなると見えにくい、暗くなったときに目が慣れにくい方
  • 風邪をひきやすい、肌がかさつく方
  • 授乳期の女性、がん・動脈硬化・心臓病の予防をしたい方 など

※夜盲症:薄暗くなったときに物が見えにくくなる状態
※悪心:嘔吐に先行するむかつき、吐き気


ビタミンB12

生理作用成長促進(たんぱく質・核酸の合成)、貧血予防(造血、赤血球生成) など
欠乏症貧血、特に巨赤芽球性貧血 など
過剰症腎機能障害、石灰化障害 など
多く含む魚介類しじみ、すじこ、ほっき貝、はまぐり、あさり、いわし、煮干し、あんこうのきも、いわし、かき、たらこ、さんま、にしん など

水溶性ビタミンのひとつ。化学名は「コバラミン」。
葉酸とともにヘモグロビンの合成、つまり赤血球を作り出すのに深く関わる栄養素です。また、神経細胞内のたんぱく質や核酸(遺伝子の主な成分)の合成を助けたり、修復したりします。
ビタミンB12が不足すると血を作る機能が低下するため、赤血球が減少したり、異常に大きな赤血球が作られたりして貧血の原因となり、下半身にしびれを起こしたりもします。さらに進行すると、運動失調などの神経障害が起こります。
普通の食生活であれば過剰症となることは考えにくいですが、偏った食事を続けたり、サプリメントだけを摂取する場合などは注意が必要です。

特に積極的に摂取するとよい方

  • 動物性の食物のみに存在するため、植物性の食物を多めに摂取している方は意識して摂取した方がよいでしょう。

ビタミンD

生理作用歯・骨の形成、筋力維持 など
欠乏症くる病、骨軟化症、歯・骨の発育不全、骨粗鬆症 など
過剰症腎機能障害、石灰化障害 など
多く含む魚介類あんこうのきも、いわし、すじこ、いくら、まぐろ、かわはぎ、さけ、にしん、うなぎ、ひらめ、まぐろ など

脂溶性ビタミンのひとつ。化学名は「カルシフェロール」。
成長促進、特に骨や歯にカルシウムの沈着を促すビタミンです。小腸でカルシウムの吸収を促進させたり、腎臓での再吸収を促す働きがあります。
体内でビタミンDが足りなくなると、骨の石灰化が不十分となり、子どもであればくる病、大人であれば骨軟化症を引き起こすことがあります。
骨や筋肉の維持に欠かせない栄養素ですが、過剰に摂取すると血中のカルシウム量が増加し、心臓や腎臓などにカルシウムが沈着して腎機能障害や石灰化障害などが起こります。通常の食生活であれば心配はありませんが、サプリメントで大量に摂る時には注意が必要です。

特に積極的に摂取するとよい方

  • あまり日光に当たらない方
  • 紫外線をカットする化粧品・日焼け止めを常に使っている方
  • 皮膚でのビタミンD産生能力が低下している高齢の方 など

※くる病:生後1〜3か月の子どもに多く見られる病気で、関節の腫れ・痛み・変形、成長の遅れなどが起こります。また、骨や歯がもろくなり、骨折しやすくなったり、歯が変色したりします。


ビタミンE

生理作用発がん抑制、アンチエイジング・抗酸化、老化防止、血管強化・血行促進 など
欠乏症貧血(赤血球寿命の短縮、酸化的溶血の亢進)、不妊 など
過剰症特になし
多く含む魚介類あんこうのきも、すじこ、キャビア、いくら、あゆ、たらこ、いわし、うなぎ、たい、子持ちかれい、はまち、うなぎ、あこうだい、めかじき、えび、するめ、ほたるいか など

脂溶性ビタミンのひとつ。化学名は「トコフェロール」。
魚介類全般的に多く含まれています。強い抗酸化作用があり、体の中では細胞膜の構成成分となっている不飽和脂肪酸の酸化を防いだり、動脈硬化を引き起こすLDLコレステロールの酸化を防いだりしています。
血行を良くする働きもあり、頭痛・不眠・手足の冷え・肌の老化防止などに役立つ成分です。ビタミンAやビタミンCと一緒に摂取すると、相乗効果が期待できます。また、脂質と一緒に摂ることで吸収率を上げられます。
不足すると、細胞膜の機能が低下して老化の原因となったり、また、貧血が起きたりします。

特に積極的に摂取するとよい方

  • 生理不順の方
  • 更年期障害や生活習慣病が気になる方 など

※酸化的溶血:ビタミンEの不足により、血液中のビタミンE濃度が低下し、細胞膜の脂質が酸化して、未熟児や乳幼児などは赤血球膜の抵抗性が弱まり、溶血性貧血を起こすこと。


ミネラル

カルシウム

生理作用骨や歯を作る・強く丈夫にする、血液凝固、筋肉の収縮、神経の興奮抑制 など
欠乏症骨の発達障害、骨粗鬆症、神経過敏 など
過剰症泌尿器系結石(尿路結石等)、ミルクアルカリ症候群、他のミネラルの吸収抑制 など
多く含む魚介類煮干し、ししゃも、ちりめんじゃこ、いわし丸干し、わかさぎ、干しえび、しじみ、しらす干し など

ビタミンDと同時に摂ると、吸収率アップ!
カルシウムは人の体内のミネラルとしては最も多く、大人で体重の1〜2%を占めています。
日本人のカルシウム摂取量は不足状態にあり、骨粗鬆症などの欠乏症が問題となっています。また、慢性的にカルシウム不足が続くと、肩こりや腰痛、イライラなどの神経過敏状態になることがあるので、骨ごと食べられる魚や、乳製品・小松菜・水菜などを積極的に食べましょう。
厚生労働省が定めるカルシウムの1日当たりの摂取量上限は、2,300mgです。
普通の食生活であれば過剰症となることは考えにくいですが、偏った食事を続けたり、サプリメントだけを摂取したりする場合などは注意が必要です。

特に積極的に摂取するとよい方

  • 成長期の子ども
  • 閉経後の女性
  • 骨粗鬆症が心配な方 など

生理作用赤血球のヘモグロビン構成、酸素の運搬と供給 など
欠乏症鉄欠乏性貧血、全身的な酸素不足による諸症状(疲れやすい、だるい、頭痛、動悸、食欲不振) など
過剰症胃腸障害、急性鉄中毒 など
多く含む魚介類かつお、まぐろの赤身や血合い、いわし、ぶり、さば、あじ、あさり など

血合いの多い赤身の魚には、鉄分が多く含まれています。特に血合いの部分には「ヘム鉄」と呼ばれる、吸収されやすい鉄分が含まれているので、鉄分不足かも?と思ったときにおすすめです。
鉄分は吸収されにくいミネラルなので、吸収を助ける働きをするビタミンCの多い食材と組み合わせたり、血行促進につながるビタミンEと組み合わせるなどの工夫をすると、摂取効率を高めることができます。
普通の食生活であれば過剰症となることは考えにくいですが、偏った食事を続けたり、サプリメントだけを摂取したりする場合などは注意が必要です。

積極的に摂取するとよい方

  • 成長期の子ども
  • 月経のある女性
  • 妊産婦 など

亜鉛

生理作用たんぱく質、核酸の合成促進、酵素の構成 など
欠乏症皮膚炎、月経不順、成長障害、味覚障害、感染症などへの抵抗力が低下
過剰症頭痛、発熱、嘔吐、倦怠感、脱水症状、腎臓の障害 など
多く含む魚介類かき、ほや、かに缶、たいらがい、はまぐり佃煮、いかなご、たらばがに、毛がに、焼きたらこ、しゃこ など

ビタミンCと同時に摂ると吸収率がアップ!
亜鉛は、新陳代謝、たんぱく質や遺伝情報に関与するDNAやRNAの合成、インスリンの合成、免疫反応に関わる酵素の構成成分となります。
体内のいたるところで機能するため、不足するとさまざまな症状が出ます。
普通の食生活であれば過剰症となることは考えにくいですが、偏った食事を続けたり、サプリメントだけを摂取したりする場合などは注意が必要です。

積極的に摂取するとよい方

  • 子ども
  • 妊婦の方
  • 高齢の方 など

セレン

生理作用抗酸化作用、がんの抑制 など
欠乏症心筋障害、下肢の筋肉痛、皮膚の乾燥、フケ増加、脱毛 など
過剰症脱毛、しびれ、筋肉のけいれん、嘔吐、下痢、肝硬変 など
多く含む魚介類あじ、かつお、かつお節、わかさぎ、ほたて、あんこうのきも、たらこ、くろまぐろ、うるめいわし、まがれい、うに など

魚介類はセレンを多く含むと言われています。
ビタミンCやビタミンEと同時に摂取するのがおすすめです。
大人でも体内には10mgほどしか存在していませんが、体内で生成された過酸化物質を分解する酵素の重要な成分として、老化防止やがんを抑制する働きが注目されています。
普通の食生活であれば過剰症となることは考えにくいですが、偏った食事を続けたり、サプリメントだけを摂取したりする場合などは注意が必要です。

特に積極的に摂取するとよい方

  • 成長期の子ども
  • 閉経後の女性
  • 骨粗鬆症が心配な方 など